視点・焦点・論点

第9号 令和元(2019)年8月2日

技術士・建築士が展開する防災・減災活動の御紹介

はじめに
 泉南市防災技術者の会は、前泉南市長・向井通彦氏の声かけによって、平成17年9月に設立された地元で居住又は就労する防災に関心が強い技術者(技術士、建築士等)の任意組織です。
 地元の状況に通じている技術者集団として、平常時や災害発生時に、防災対策に関するより適切な技術的アドバイスや災害救助活動を行うことを目的としています。


1.本会の概要
(1)会員
 現在の会員数は10名(顧問を含む)で、建築士、技術士が中心となっています。
 専門は、建築設計、都市計画、土木施工、港湾・空港といった分野で、ハードな業務を日常的に手がけている人々です。

(2)会の事業
 会則に定められた目的・事業内容は以下の通りです。

▼泉南市防災技術者の会会則(抜粋)
(目的)
第2条 本会は防災についての研修・研究を行うとともに、災害発生時には行政と連携して、適切な活動を行うことを目的とする。
(事業)
第3条 本会は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
1 研修会・研究会の開催
2 先進地、被災地等の視察
3 災害発生時における活動
4 他団体との交流
5 その他必要と認める事業

(3)会の特色
 本会は会則に基づいて活動を行っていますが、会の特色としては以下のような点があげられます。
①技術的専門家集団であること
 既述のように本会は技術士、建築士といった都市・建築物や土地・地盤に係る技術的専門家の集まりです。他の分野の専門家の参加を排除している訳ではありませんが、主に地域の都市構造、市街地特性、建築物現況と防災まちづくりという視点からの活動を中心にしているため、現状ではそのようになっています。
②地域で居住又は就労している人々であること
 会員は地元で居住又は就労していることから、地域の状況にきわめて精通した知識を持っている上、地域に愛着をもっています。(中には地域で生まれ育った人もいます。)
そのため、防災や災害対応に関しては、地域コミュニティの状況を含めて地域の実情に合ったきめ細かなアドバイスが出来るという特色があります。
③行政との情報交換を行っていること
 本会の顧問として、泉南市長(技術土)に入っていただいていますが、常時、行政から地域防災に係る資料提供や情報提供を受けているため、平常時や災害時においても、的確なアドバイスや活動又は行政との連携が可能です。
④平常時は特色ある地域防災啓発活動を行っていること
 平常時は、会員相互の情報交換や意見交換のため定期的(1ヶ月に1回)に会合を持っています。また、地域の防災イべントへの参加や地元の婦人会等の団体とも交流活動を行っています。
⑤非常時は地域の災害復旧活動に参加すること
 災害時には、行政や地元の自主防災組織とも連携して、復旧活動に専門的立場から参加することとしています。(現在のところ参加実績なし。)

2.日常の問題意識と具体的活動
(1)日常の問題意識
泉南地域は目立った断層もなく、又大阪湾という内湾に面しているため、震災や台風等の災害被害のあまりない地域です。
このような地域において「東南海・南海地震」が近々に発生するかもしれないといっても住民の関心は他の地域に比べて低いのが実情です。
私たちの日常の問題意識はまさにここにあり、どのようにして地域住民の防災意識・防災知識を高めるか、また、災害時の備え(耐震対応等)を今からしてもらえるか、そのしかけづくり、しくみづくり、ネットワークづくりが重要と考えています。

(2)日常の具体的活動内容
①会員の定期的会合
 月に一度(第3木曜日の午後)定期的に会員が集まり、情報交換や意見交換の場を持っています。
②他団体との交流活動
 地元の婦人会や地域企業と、防災活動等について交流会を持ち情報交換、意見交換を行っていまず。
③防災訓練への参加
 地元に立地する大規模小売店舗と地元行政との合同防災訓練に毎年参加し、地域住民の防災意識の啓発や耐震相談会を開催しています。
④防災シンポジムの開催
 地元で当会主催の防災シンポジウムを開催し、地域住民の意識啓発を行っています。

▼イオンモールりんくう泉南2階イオンホールに於て


3.地域の防災ネットワークの構築に向けて
 地域住民が防災意識を一定水準に保ちながら、日常生活の中で防災ネットワークを構築し、災害時に「自助」「共助」活動(「公助」は行政がしかるべく日常から準備しているため当会としての取り組み順位は低い)が機能的に展開されるにはどのようなしくみ、しかけづくりが必要かというのが我々の関心事であり、めざすところでもあります。
 本会の日常活動からいくつかの提案をしてみたいと思います。
①町内会自主防災会の防災倉庫の住民による日常管理
②災害時の利用水にもなる雨水貯留施設の水の花壇への日常散水
③防災備蓄倉庫の備蓄食品を利用した炊き出し訓練と試食会
④南大阪広域防災拠点の荷とき場の体育館としての日常利用
⑤商店街や大型商業施設と連携した防災グッズの販売フェア、防災シンポジウム等のイベント開催…
 このような活動は地域住民が日常生活の中でコミュニティ活動の一環として展開するものであり、本会もそのすべてではありませんが実施してきているところです。日常のこのような活動を通じて、災害時にはコミュニティ力で「自助」「共助」の災害活動が展開できると考えています。

おわりに
 我々は技術者集団ではありますが、防災技術だけで防災まちづくり・災害対応ができないことはいうまでもありません。
 また、阪神淡路大震災の例をみても、行政だけでは防災まちづくりは完全でないことがわかりました。
 ここで防災まちづくり上最も大事なことは、まず地域コミュニティの防災力、防災ネットワークを高めることだといえ、そのしかけづくり、しくみづくりがテーマとなります。
 日常から近隣の人々のつながりが、災害時にも大きく機能することは「自助」「共助」の視点から最も重要なことだと思います。
 我々は地域で、地域に根ざして防災活動をする技術者集団として、またソフトを大事にするハードの専門家の集まりとして今後とも活動していきたいと考えています。